トップメッセージ 代表取締役会長 スティーブ・チャン
1: トレンドマイクロ、そのユニークな成り立ち
私が日本で起業した理由
もちろん情報化とネットワークの普及に伴いコンピュータ・セキュリティの分野に大きなビジネスチャンスがあるからだと思ったからです。しかもお客さまの要求値も世界的に見てもとても厳しい。こういうマーケットで喜んでいただける製品やサービスを生み出すことができてはじめて成功すると考えていました。
しかし外国人の私が日本で起業した真の理由があります。
それは日本発で、グローバル企業の進化系とも言うべき組織をつくり経営する、ということです。
その努力を積み重ねてきた結果、「失敗を恐れず常にチャレンジする」、「コア・テクノロジーにフォーカスする」私たちの企業活動そのものが2000年初頭から米国ハーバード・ビジネススクールでの研究対象になり、2003年にはポーター賞(一橋大学国際企業戦略企画科の竹内研究科長が提唱し、ハーバード大学のポーター教授の名を冠して作られた、独自性のある戦略を実行し、成功を収めてきた日本の企業を表彰する制度)に選ばれました。
振り返ると、トレンドマイクロは1989年の設立から17年、ウイルスおよびネットワークセキュリティ対策を研究し続けてきました。1998年の夏に店頭銘柄として株式を公開、続いて1999年に米国ナスダックに上場、2000年には東証一部に上場しました。このとき、世界市場においても上場企業の上位グループに迫る株式時価総額となり、当時わずか200名足らず(全世界では700名)の従業員で構成されている会社が国内外でこれだけの評価を受けるのも、変化の激しいIT業界において、当社が「知識(ナレッジ)」をビジネスとしている企業だということを認知いただいているおかげだと自負しております。
その後も私たちのビジネスは着実に世界展開を拡大し続けており、現在では売上の60%は日本以外の国で計上されます。世界28ヵ所に拠点を持ち、ワールドワイドに展開、ユニークな事業戦略で、競合他社との差別化に成功した多国籍経営企業です。現在、世界中に約2900名の社員がいますが、日本人は約14%にあたる400名強で構成されており、国内外問わず、ご自身の経験を活かし、活躍していただく環境を整えています。
2: 急激なブロードバンド化と新たなるビジネスチャンス
私たちは単に技術を提供するサービス企業ではなく、価値ある知識を提供する企業を目指します。すなわち、薬(技術や製品)を提供するだけでなく、医者(エキスパート)として医学知識と経験をサービスにかえて提供している、というイメージです。
一例として、いままでのウイルス対策ソリューションというのは、いかにすばやくワクチン(ウイルスパターンファイル)を作成し、迅速にアップデートを行うかという点に力が注がれてきましたが、2003年からその状況が大幅に変わってきたのです。
従来型のウイルスは、その多くがメールやWebを経由することから、ネットワークにおけるゲートウェイでの遮断、Webやメールサーバで検出することが可能でした。しかし、近年、新たなネットワークの脅威として現れたネットワークウイルスは、ファイルベースだけでなく、セキュリティホールを悪用して感染拡大を試みます。ウイルスとワーム、それにスパムメールの性質を兼ね合わせており、あらゆるところからTCP/IP経由で入り込んできます。しかも、これを検出するのにウイルスパターンファイルに頼ることはできません。しかもこうしたウイルスの一部は、ハードディスクではなくメモリに巣食うので、従来のソリューションではネットワークウイルスを発見、駆除できないのです。トレンドマイクロではかねてからこの問題を深刻なものととらえ、高技術・高品質ソリューションを開発するために多額の投資を行ってきました。
トレンドマイクロでは、ウイルスに悪用される可能性の高い脆弱性の診断から、ウイルスの感染拡大の予防と対策およびシステム復旧まで、大規模感染ライフサイクルに沿い、感染拡大と被害を最小限にとどめるウイルス対策ソリューションを提供するなどのサービスに注力しています。すなわち、トレンドマイクロと他社との違いは、一番大事なソリューションが、このような目に見えない「サービス」にあると考える点です。高付加価値な製品・サービスの提供に着目し、迅速かつ柔軟に変化・対応する私たちトレンドマイクロにとっては、ネットワークの脅威さえもビジネスチャンスに転換させてしまいます。
3: ナレッジビジネスに大切なのは「人材」
(1) 仕事にグローバルな視野を持つこと
カスタマーや、市場、そしてインターネット上のビジネスにもはや地域や国境はありません。トレンドマイクロには、日本の本社のみならず、グローバルにそのような人材が集まっています。全員が多国籍企業で働いていると言う認識を持っていますので、一刻を争うようなプロジェクトが世界のどの地域でもすぐにスタートできるのです。
(2) 変化に対応できること
IT、特にコンピュータ・ソフトウェア産業においては技術のみならず、サービスやビジネスそのものも、急激なスピードで変革(=Change)を起こしていきます。このスピードに対応するため、私たち自身も革新を大事にしています。もちろん革新には挑戦や失敗が伴います。しかしそれに立ち向かう勇気を持つものだけがこのビジネスに勝利できると確信しています。
(3) 「スマート」で「エネルギッシュ」であること
私たちの熱意とエネルギーを会社にとって最適な成果をもたらすよう方向付けするためには、スマートであることが必要です。エネルギッシュであることは、改革や、創造性、お客さまとのコミュニケーションをとる勇気を促し、トレンドマイクロにとって有益でスマートな決断を可能にします。スマートでエネルギッシュになるべく能力を磨くことは当社の長期的成功だけでなく、トレンドマイクロの一番大切な資産―社員の皆さん―の成長のために欠かせないことなのです。強い熱意を持っていても、それを実際に行動で示さない限り私たちの熱意やエネルギーは意味を成しません。IQとEQ(感情指数(Emotional Intelligence)の両方が欠かせません。
(4) 良いことも悪いこともはっきりいえること
私たちはそれぞれが自分の成長を考えて、知識を増やしていくようなワーキングスタイルを持っています。このようなオフィスで大切なこと、それはコミュニケーション能力です。国籍にこだわらないチームプレーを発揮するため私たちは様々な取り組みを行っています。たとえば、キーポジションにあるマネージャは頻繁にビデオ会議を開き、世界各地のスタッフと意見交換をしたり情報共有したりしています。また、トレンドラボと呼ばれるウイルス解析/サポートセンターに全世界の担当者が集まって勉強会を開き、コミュニケーションを深め、トレーニング、スキルアップを行うこともあります。
